プロ選手インタビュー|3x3は時代にフィットしている競技 世界に挑戦できるのが何よりの魅力(UTSUNOMIYA BREX.EXE|齊藤 洋介選手)

栃木県・宇都宮市で開催されたFIBA 3x3 ワールドツアー宇都宮オープナー 2025。
これまで何度も日本代表として世界戦を経験し、本大会の誘致チームUTSUNOMIYA BREX.EXEに所属する齊藤 洋介選手に、3x3の業界やキャリアについてお話を聞きました!

トッププレイヤーから見た、3x3界の変化

齊藤選手が3x3に転向された2018年から、日本の3x3界の変化したと感じられることはありますか?

嬉しい変化は、競技者が圧倒的に増えたことですね。リーグに参画するチームも増えましたし、先日行われたアジアカップでも、日本代表選手に選ばれたのは5人制の選手ではなく、3人制をメインに活動している人たちで、強さのレベルも上がってきていると感じています。

一方で、世界と比べてた時に課題に感じられていることは何でしょうか。

3x3のスーパースターが必要だと感じています。世界や他の競技を見渡すと、「この選手はこの国のスーパースターだよね」と言える人が必ずいて、そのスーパースターを追いかけてさらに下の世代がどんどん強くなっていく好循環が生まれていると思います。
3x3は競技自体がまだ新しいこともあり、少なくとも日本ではこの定義がまだ定まっていないと感じていて。世界に通用していくにはこのスーパースターの存在は必要不可欠ではないかなと思っています。

そのスーパースターが生まれる・育つカルチャーや支援も重要ですよね。

本当にそうですね。選手やチームの評価基準ももちろんですが、競技活動全体へのサポート体制や、3x3がビジネスとしてダイナミックにアップデートされると景色は変わっていくのではないでしょうか。
国内にも、魅力や実力がある選手は本当にたくさんいます。「3x3のアイコン」となり得る選手と、その選手を盛り上げてくれる環境があれば、競技も一気に広がりを見せてくれると思うので、業界全体で盛り上げていきたいです。

2024年度のプレーオフの一幕。今年で40歳とは思えぬ身体能力で、パワフルなプレイを観客たちに魅せていた。

3x3のプロプレイヤーは、世界にチャレンジできる可能性が高い バスケキャリア

宇都宮市では3x3は身近な競技となっていますが、「3x3は知っているけどやったことがない」というバスケットボールプレイヤーたちは全国的にまだまだ多いですよね。彼らに向けて「3x3の強み」のポイントを教えてください。

観戦する側と、プレーする側両方に良いポイントがあると思っています。
10分で試合が完結するので、今の時代にフィットした観戦競技だと思います。
野球やサッカーのように数時間かけて決着が着く競技だと、「見る」というハードルが上がってしまいますし、「ながら見」になってしまっていると思います。
10分という、限られた時間であれば熱くて集中できる時間をみんなで共有できます。子供から大人まで楽しんでもらえる競技ですよね。

プレーする側としては、「世界にチャレンジできる可能性が高い」というところですね。
バスケットボール全体で見ると、競技人口は国内だけでもどんどん多くなっています。NBAや世界で戦う選手も随分増えました。
プレイヤーとしてのキャリアの選択は個人によって様々ですが、若いプレイヤーに伝えられるとしたら「B1に行くよりも高い確率で、オリンピックや世界大会に挑戦できる」それが、3x3の何よりの魅力だと思うんです。今、B1の選手になることは、東京大学に合格するよりも倍率が高いんですよ(笑)。
バスケットのキャリアを考えるときに、世界にチャレンジできる可能性が高い3x3も、ぜひ考えてみてほしいですね。

齊藤選手自身、日本代表選手として何度も世界に挑戦している

5人制の成長世代の選手にとっても、3x3は良いトレーニングになる

5人制の選手でも、3x3に挑戦される方も増えてきましたよね。

個人的には、3人制の練習は5人制のトレーニングとして、とても優れていると思っています。
切り替えの早さ、ボールが回ってくる頻度が圧倒的に5人制よりも早い。
最初は頭が追い付かない状況が続くと思いますが、このスピードに慣れると5人制の切り替えや、筋力的な速さがとても鍛えられると思います。

若い選手に限らず、成長世代(より一層個の力に磨きをかけ、選手としての力を伸ばしていきたい世代)の選手にとっても、抜群に良い効果を出せる競技だと思いますね。
3人しかコートにいない、コーチもいない。攻められない人であっても、攻めないといけないですし、守りが下手でも守らないと勝てません。「やらざるを得ない状況」が、5人制では見えなかった個人の能力を高めてくれると思います。

齊藤選手は次世代育成にも積極的に取り組まれていると思いますが、「5人制は教えられるけど、3人制は…」という方が多いというのもよく耳にします。

他の競技に比べると、3x3がプロスポーツになってからまだ日は浅いですからね。
現役選手や、選手だった人がコーチをするしかないというのが今のフェーズなんだと思います。でもあと数年後には、選手を経験した人たちがグッと増えますから、ここからどんどん増えていくと思いますね。まずは私たちのような経験者が、3x3の魅力をしっかりと次世代に伝えていくことを続けていくことが大切だと思います。


【後日談】

FIBA 3x3 ワールドツアー宇都宮オープナー 2025では、残念ながら男子日本勢は4チームが予選敗退となりました。
海外のトップチームは、2mを超える体格と圧倒的なシュート力を武器にダイナミックなプレーを展開していたのが印象的。アジアカップでは男女ともに最高戦績をおさめた日本ですが、欧米のトップチームたちと今後どう戦っていくか?注目です!

大会期間中は老若男女問わず、陽が落ちてもたくさんの人が会場に集まり、競技をリラックスしながら楽しんでいるのが印象的でした。

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