
今回お話を伺ったのは、兵庫県のプロチーム、EPIC.EXE(以下:EPIC)でキャプテンを務める一色 篤選手です。3x3.EXE PREMIERやUNITEDなど国内リーグを中心に活動をしながら、2025年度は3度の海外遠征にも挑戦しています。EPIC加入後は、3x3のキャリアを着実に積み上げ、先日行われたFIBA ASIA CUP 2026へ向けた日本代表第1次選考合宿にも選出されました。平日は中学校の体育教師として働き、週末はトップ選手としてコートに立つ「デュアルキャリア」を体現する一色選手。ひとりの競技者として、そしてチームをけん引するリーダーとして語られる言葉の端々には、限られた時間の中で最大限の力を発揮するための考え方や、周囲との信頼を深めるためのリーダーとしての働きかけの大切さが込められていました。
Contents
ずっとバスケがそばにあった生活。一通のDMから始まった3x3への挑戦
まずは自己紹介をお願いいたします。
EPIC.EXEの一色 篤です。年齢は29歳、愛媛県出身です。
3x3は社会人になってから競技を始め、2021年に現在のチームに加入しました。仕事は、公立中学校の体育教師をしており、女子バスケ部の顧問もしています。
一色選手のこれまでのバスケットボールキャリアを教えてください。
父がバスケの指導者、兄や姉もプレーヤーという、まさに『バスケ一家』の中で育ちました。幼稚園の頃は周りの子が砂遊びをして遊ぶ中、バスケットコートで遊ぶような子供だったようです。
中学から大学まで5人制の競技に打ち込んで、広島大学卒業後、就職を機に関西に引っ越しました。社会人になってからも、地域リーグを中心にプレーを続けていて、ごくたまに3x3やSOMECITYに参加していたくらいだったんですが、ある時SNSを通じてEPICのチーム関係者から声をかけてもらいました。
当時は3x3を本格的にやることを考えていなかったのですが、その人の熱意が後押しとなって、チームに加入することを決め、本格的に3x3の世界へ飛び込みました。
入団翌年には、キャプテンを任せてもらっています。
今は3x3を軸に活動していますが、5人制の社会人チームでも活動を続けています。
小さなコミュニケーションを積み重ねることで、「同じ熱量」を共有できるチームへ
キャプテンとして、チーム作りで大切にされていることはなんでしょうか?
EPICの戦術や練習メニューなど、競技に関することは私が主体となって考えています。
組織作りにおいて最も大切にしているのは、全員の共通認識を揃えることです。
3x3は5人制と違い、指示を出すのも、行動するのも自分たちです。だからこそ、試合に出ている4人が感覚だけで動いていては、絶対に勝つことはできません。
他のチームの方も当たり前にやっていると思いますが、国内外の試合映像を徹底的にチェックして、分析します。実際にコートでメンバーと合わせて、「自分たちのプレー」に落とし込んでいく。細かく何度もチェックを行い、本番に備えるようにしていますね。

EPICは男女のチームがあるので、全体としては人数が多いと思います。チームをまとめる上で、一色選手が大切にされていることはありますか?
顔を合わせる日は1日1回、必ず全員に声をかけるようにしていますね。
若い選手も多いので、仕事やプライベートで悩んでいたり、競技のスランプに陥ってしまっていたり、全員が万全なコンディションの日の方が少ないと思うんです。選手たちの顔つきを見れば、分かっちゃうんですよね(笑)。
調子が悪そうな時こそ、あえて細かいプレーに対して「あそこの動き、すごく良かったよ」と具体的にポジティブな声をかけています。「1人で抱え込まず、一緒に乗り越える仲間がいる」という安心感を持ってもらうことは、私の中で優先しているポイントです。
あとは些細なことかもしれませんが、忘れ物や遅刻、礼儀のない発言や行動があれば、しっかりと注意するようにしています。もちろん、私自身もうっかりしてしまうことはありますから、その時は素直に謝っていますよ(笑)。
フラットで誠実な関係。「信じられる」と思い合える繋がりをチームメイト同士で持てれば、泥臭くてハードな練習も一緒にやっていけるんだと思います。
EPICは外国人選手もいらっしゃいますよね。彼らとのコミュニケーションで工夫されていることはありますか。
基本的には他のメンバーと同じです。もちろん、慣習や前提が違うので、そこは理解ができるまで粘り強くコミュニケーションを重ねていますね。
改善してほしいことがある場合は先に否定ではなく、ポジティブな目標に向けて、どうして必要かを伝えています。言葉の壁があっても、伝えようとする意思があれば必ず届きます。
練習生を含めて誰一人として置いていかない、同じ熱量で目標に向かっていくことができるのが、今のEPICの強さだと思っています。

ご自身もトッププレーヤーとして活躍されていますが、今シーズンは、岸川 達希選手をはじめ、若手の方たちも活躍したシーズンではないでしょうか。
そうですね。最近、自分の記録や活躍よりも、メンバーの成長した姿を見るほうが、自分も幸せだなと感じるようになってきました。
先日、岸川が私と一緒に代表合宿に選ばれた時は、とても嬉しかったです。彼が日々の練習の中で必死に頑張っている姿をずっと間近で見ていたので、「本当に良かったな」と思いました。
世界戦への挑戦や代表合宿を経て、これまでの競技の向き合い方から私自身も変わってきました。もちろん1人のプレーヤーとして負けたくない気持ちはありますが、それ以上に「チームがどうあるか」「仲間がどう輝くか」を最優先に考えるようになってきたと思います。
若い選手たちが壁を乗り越え、これまでの自分たちを超えていく。そのプロセスを一番近くで見守り、支えることに、私がコートに立ち続ける意味があると思っています。
日本代表候補合宿での経験を、今後どのようにチームへ活かしていきたいですか?
代表合宿で肌に触れた世界基準の高さや戦略の緻密さを、すべてEPICに持ち帰ってチーム全体をアップデートしていくことですね。
これまで、惜しみなく競技に情熱を注ぎ、チーム練習を強度高く行ってきた自信はありました。合宿での練習は、そういった「これまでの自分のやり方」を肯定してもらえた気持ちになりましたね。一方で、中祖ヘッドコーチをはじめとする代表チームが描いている、「日本の3x3」の課題点や未来のビジョンを共有いただいて、「まだまだ自分たちが取り組めていないことがある」と、気付くことも多かったです。

デュアルキャリアだからこそ磨かれる、セルフマネジメント能力
現在も5人制と3x3の両方でプレーされていますが、それぞれのプレースタイルは変えていらっしゃいますか。
ふたつの競技の違いの捉え方はそれぞれだと思いますが、私は5人制は「時間を使って組み立てる」、3x3は「瞬間的な判断が勝敗を分ける」という違いがあると思っています。
5人制をやっているときは、「丁寧に試合を組み立てること」を最優先しています。
チームの連携の中で、いかに「確率の高いシュート」を打てるか。決められたルールをみんなで協力してやり抜く、という意識が強いですね。
一方で3x3は、5人制よりもショットクロックが短いので、一瞬の「個人の判断」が勝敗に直結します。私は3x3を”瞬間を生きる競技だと感じています。
攻めも守りも「個人の仕事の強度と範囲」の使い分けをハッキリと切り替えるようにしています。
平日は体育教師、週末はプロ選手。非常に多忙かと思いますが、両立の秘訣はなんでしょうか?
一言で言えば、オンとオフの切り替えを明確にすることです。
仕事中はスマホを見る暇もないほど、目の前の業務に集中して「いかに効率よく、かつ質を高められるか」を追求しています。周囲からはよく「大変ですね」と声をかけられますし、確かに遊ぶ暇はありませんが(笑)、不思議と私自身はそれを負担と感じたことがありません。
むしろ、コートに立つことが仕事のリフレッシュになり、職場で働くことが競技への活力を生む。自分の中では、最高の結果を出し続けるための「健全な循環」ができあがっています。
その循環を維持するために不可欠なのが、徹底した切り替えです。
コートに立てば仕事のことは一切持ち込まない。逆に、職場では競技の感情を引きずらない。この「メリハリ」があるからこそ、一瞬一瞬の集中力を高められています。
仕事が上手くいかないと、競技に影響も出ますし、その逆もしかりです。
だからこそ、時間の使い方や感情のコントロールといった「セルフマネジメント能力」は自然と磨かれてきたと思います。
ユース世代にこそ3x3を。3x3が育む、主体性という力
部活動の顧問として、生徒の皆さんに伝えていることはありますか?
私が顧問として生徒達に一貫して伝えているのは「自分で考えることをやめないこと」の大切さです。
部活動では5人制を教えていて、時折3x3を練習に取り込んでいますが、
ユース世代にこそ、「主体性を育む」「自分で決めたことをやり切る」3x3はピッタリだと思いますね。
私自身も、3x3を通じて「今、どう動くべきか」を自問自答する機会が劇的に増えました。プレーの責任が増すことで、準備や振り返りの質も自然と高まっていく。この「思考のサイクル」こそが、選手としても人間としても自分を成長させてくれたと感じています。
だからこそ、若い選手たちにはぜひ一度、3x3を経験してほしい。圧倒的な試行回数と判断の連続。そこで磨かれる主体性は、コートを離れた場所でも必ず彼らの力になるはずです。

EPIC.EXE #6 一色 篤(いっしきあつし)
1996年生まれ 愛媛県出身
松山南高等学校卒業後、広島大学に進学。大学卒業後は5人制チームに所属していたのちに、3人制に転向。EPIC.EXE加入後、2年目でキャプテン就任。
EPIC.EXE 公式チームサイト
https://www.instagram.com/epic.jp
EPIC.EXE 公式Instagram
https://www.instagram.com/epic.jp/
EPIC.EXE 公式X
https://x.com/Epic3x3

